■MotoGPのあゆみ
2004年最終戦、失意のバレンシア
10月最後の日曜日。バレンシアは今年のMotoGP最終戦を迎えていた。モリワキは当初のマレーシアGP、そしてオーストラリアGPへの参戦予定を変更し、スペイン・バレンシアに乗り込んだ。オリビエ・ジャックの参入で日本GP11位という望外の成績を残した結果、開発ライダーとしてのジャックの有効なコメントを生かし、よりMD211VFのポテンシャルを上げることで、最終戦での勝負に打って出ることにしたのだ。準備は万全だった。
しかし決勝は信じられないものだった。ジャックが周回遅れとなったのだ。その数周後、ジャックはMD211VFをピットに入れた。リタイヤの決意だった。
レースが始まって「序盤はとてもよかった」というグリップがレース終盤になって急速に失われたのだ。
バレンシアサーキットの路面は想像以上にμ(摩擦係数)が低かったことも影響したかもしれない。高出力を誇るホンダ5気筒のエンジンパワーがグリップの低下を早めた可能性がある。
「それでもジャックは走り続けてくれました。データを取るために我慢してくれたんです。最後は氷の上を走っているようだったと言っていました」
結果的にリタイヤしたのは、後の原因解析の為に必要なデータは十分に取れたと判断したからだった。そしてこの周回はチームにとって貴重なデータとなった。