■MotoGPのあゆみ
初めてのフィレンツェでレース文化に触れる
そして5月31日、メカニックとスタッフがイタリアに飛んだ。初めてのヨーロッパ遠征である。イタリア・フィレンツェでは貸別荘を借り、自炊での合宿生活が始まった。食材を買いに行ったスーパーマーケットではドゥカティのMotoGPマシン、デスモセデッチが展示され,買い物客の主婦がマシンに見とれるという信じられないような光景にでくわした。レースが生活の一部になっている。スタッフは文化の違いを肌で感じ取った。
”GAULOISES”イタリアグランプリ/ムジェロ
ライダー:アンドリュー・ピット(ANDREW PITT)
マシンの搬入、組み立て、基本セットアップが終わり、初めてのムジェロで走行が始まる。路面はバンピーで、下りながらの切り返しセクションが難しい。「エンジンにもフレームにも過酷なサーキットで、自分たちが作ったマシンがどこまで通用するか確かめたかった」森脇はピットの走行を見つめる。決勝まで走れる合計4時間のセッションで、マシンを仕上げなければならない。
初日のタイムは1分58秒台から始まり55秒台まで縮めるものの、トップとの差は5秒以上。それでも最高速は自己最速の317km/hマーク。カワサキワークスより早いトップスピードを記録した。予選初日での順位は23台中23位。予選2日目、ピットはアグレッシブな走りを見せたが、最後のタイムアタックラップの最終コーナーで痛恨のシフトミス。54秒9に終わる。このミスがなかったら53秒台に確実に入っていた。結局モリワキの予選順位は23台中22番手となった。
6月6日。決勝の日が来た。朝から快晴である。いよいよ今シーズン初のスタートが切られた。地元イタリア人が「ジャポネーゼ!」と声援をしてくれた。中盤ではチャタリングに悩みながらも、19位にポジションアップ。
そして終盤に入ると雲行きが怪しくなり、残り5周で雨。赤旗が出てレースが中断。これで各ピットが慌しくなった。6周の再レースとなったが、レインで行くか、スリックで行くかの判断をし、Tカーにレインを履かせ、メインカーはフレッシュタイヤに交換、そしてガソリン給油とメカニックが3人しかいないモリワキのピット内は、再スタートまで5分しか時間がない中で戦場のようになった。
第2ヒートがスタート。MD211VFは17台中16番手。絶妙なスタートで2台を交わし14位にジャンプアップ。ポイント圏内に入った。その後一時的に雨足が強まる中14位をキープしていたが、残り2周で燃料不足の症状が表れ、17位でチェッカー。
「荒れたレースで転倒もなく無事完走できてよかった。去年はマシン開発のための1年だったが、今年は実績の残すマシンを作っていく。そのために今回のような実戦をやらなければならない。テストだけでは分からない問題点が幾つも見えてきた」こうしてモリワキのヨーロッパのデビューは終わった。