2008年6月に発表された2ストローク250ccクラス / レギュレーション変更- 第3期 MORIWAKI DREAM PROJECT

「MotoGP moto2クラス」それは2008年6月に発表された。GP250クラスに代わるクラスとして「GPコミッション」(DORNA. IRTA. MSMA.そしてFIMの代表者によって組織されるグランプリ決定機関)において承認された。
このクラスは、世界的なエンジンの4ストローク化に対応する為、中間排気量の600ccエンジンを使って争われる、全く新しいカテゴリーである。この当時発表されたレギュレーションでは、市販エンジンを使用し(後にワンメイクエンジンとなる)シャーシコンストラクターが参入可能なフレーム規則と足回りで競われる事、マシンのコストを抑えてレースへの参加が容易になる様、配慮されたレギュレーションとされている。
moto2クラスは、MotoGPクラスをサポートするクラスとして、世界選手権の一環として開催され、その後各国のインターナショナルレースも開催されると期待された。
また、全日本選手権では2009年より250ccクラスへの参戦が「プロトタイプ車両」として認められた。

MORIWAKIはこの新しいクラスを「コンストラクターの活躍の場」として、そして「世界最高のレースに挑戦する絶好の機会」と踏まえ、マシン開発と販売という立場から積極的に参加する事を決定した。

これまで1988年に、HONDA NS-1の車体にCR80MXエンジンを搭載したロードレース入門マシン「MH80R」の発売、現在の250cc単気筒エンジン「MD250」シリーズの発売、MotoGPマシン「MD211VF」の開発と参戦という実績。そして35年以上に及ぶレース活動の中で培ってきたMORIWAKIの持つ「レーシングマシン」のノウハウを注ぎ込み、この新しい挑戦を開始した。

シャーシはオリジナルフレームを開発し、専用サスペンションを組み合わせ、moto2クラスに参戦を計画する世界中のチームとライダーに販売し、無論、消耗パーツのサービス体制を整え、セッティングなどのサポートも計画。マシンの開発ライダーは「森脇尚護」が務めた。

2008年7月 「鈴鹿8時間耐久ロードレース」開催時に世界に向けて発表- MORIWAKI DREAM 1号機

同年6月に発表されたレギュレーションに基づき、MORIWAKIはプロトマシンの開発に着手。約一ヶ月後に開催された「2008 QTEL FIM 世界耐久選手権シリーズ第3戦 "コカ・コーラ ゼロ" 鈴鹿8時間耐久ロードレース 第31回大会」の会場に「MORIWAKI」は世界に先駆け、moto2クラスのマシンを製作し発表。数多くの国内外メディアや関係者の注目を浴び、世界中に衝撃を与えた。
FIMのスタッフもMORIWAKIのPITを訪れ、熱心にマシンを観察。ヨーロッパのモーターサイクル誌、「MCN」ではMD600が表紙を飾る等々、大きな反響を得ている。

「MD600」一号機のフレームは、ビルダーとしてMORIWAKIが得意とする「クロムモリブデン鋼」を採用したトラス構造としている。これはMotoGPに参戦したモリワキオリジナルマシン「MD211VF」のノウハウを生かし、ディメンションの変更や、剛性バランスの最適化を比較的容易に行うことが出来る為である。エンジンはFIMのレギュレーションが決定されていなかった為、HONDA CBR600RRのエンジンを採用。どの様なエンジンが採用されても対応出来る様に配慮した。

2008年9月 鈴鹿サーキットにて1号機シェイクダウン

天候に恵まれた9月某日、鈴鹿サーキット西コースにMORIWAKI MD600が姿を現した。7月に発表されたマシンを仕上げ、メカニックが見守る中、森脇尚護がライディング。シェイクダウンの為、終始マシンの動作確認に徹したが、MD600は大きなトラブルも無く、周回を重ねデータを蓄積していく。
MORIWAKIが開発したマシンは、モーターサイクルとしての機能を全て完璧に果たした。完全新設計のバイクがきっちり走るという事はとてつもない事である。結果、非公式ではあるが鈴鹿サーキット西コースのコースレコード(ST600)を更新。MORIWAKIの考え方が実証された瞬間であった。

2009年4月 MotoGPプレスカンファレンス

そして、ついにこの時が来た。2009年4月24日(金)「MotoGP POLINI GRAND PRIX OF JAPAN」 開催時、ツインリンクもてぎ記者会見場にて「MORIWAKI "MD600" moto2車輌製作発表会およびMDプロジェクト概要説明会」を開催。

MotoGP公式の場で「MD600」が世界に向けて披露された。会場に入りきれない程、多くの関係者が詰めかけ、皆マシンを食い入る様に見つめ、社長の言葉に耳を傾けた。
マシンのベールが剥がされた時、多くの関係者が良い意味で期待を裏切られただろう。
モリワキが採用したフレーム素材はALUMINUMであった。これには大きな意味がある。「クロムモリブデン鋼」のメリットは、ディメンション/剛性バランスの変更が比較的容易である事。そして、パイプフレーム特有の「しなり」を利用し、旋回性能を引き出し易い傾向にある。しかし、あえてALUMINUMを採用したのだ。これは量産性を考慮した事、量産マシンとしての製品精度の向上を狙った事にある。レースを戦う上で、戦闘力を向上させる事は勿論、自分にあったマシンを仕上げる事も重要になる。アクシデントにあった場合、いかに早く同じマシンを仕上げるか。一年間戦う上では重要なポイントとなる。

そして、MORIWAKI MD600最大の特徴は、ヘッドパイプキャスタ角の変更/ピボット位置の変更を可能としている。マシン設計において重要であるこの仕様変更は、これまでワークスでしか行う事が出来なかった。MORIWAKIがこの仕様を決定した理由は、ライダー/メカニックの育成を行う事をも考慮している。ワークスチームのチャンスを掴んだライダーは、そこで初めてディメンションの変更を含めたセッティングを経験する。メカニックでも経験出来る人間は少ない。マシンの優位性を確保する事は勿論だが、今後のレース業界を盛り上げるには、ライダー/メカニックを含めたレベルアップも必要不可欠という考えの元、仕様の決定に至った。モータサイクル史上初の試みと言っても過言ではないだろう。

MFJ全日本ロードレース選手権での実践開発

MORIWAKI MD600の開発は、2009年9月時点で9号機に達していた。少しでも戦闘力を高める為、実走テストを繰り返し、さまざまな視点からマシン製作のアプローチを続けた結果である。そして9月26~27日「全日本ロードレース選手権 第5戦岡山」に開発の場を移す。ライダーは開発を務めてきた森脇尚護選手。この年は、GP250クラスに4サイクル600ccマシンがGP2プロトクラスとして参戦が認められていた。世界が注目する中、レースウィークがスタート。絶対に勝たなければいけないプレッシャーの中、森脇選手は予選ポールポジションを獲得。続く決勝は2位との差を7秒としTOPでフィニッシュラインを通過。

続くモテギ大会でも予選ポールポジション/決勝は2位との差を40秒以上をも広げ、TOPでチェッカーを受けた。このニュースはMotoGP webサイトでも取り上げられ、世界中にインパクトを与えた。我々が開発してきたマシンの優位性が実証された瞬間でもある。

世界に選ばれたMD600

マシンの開発当時より、様々なプロレーシングチームからオファーを受けていたMD600。最終的に5チーム7ライダーがMD600を駆り、レースを戦う事となった。モリワキ側として高品質なマシンのサポート活動を続けていくには、現段階ではこの台数が上限だという判断の元に、5チームをMAXと設定。4チームがMotoGP moto2クラス、1チームがスペイン選手権を戦う。2009年の年末より順次マシンが海外へ旅立ち、2010年より行われるNEWカテゴリーのレースに勝つ為、各チーム精力的にTESTを行った。MD600はモータースポーツの本場、ヨーロッパでも高評価を得、各TESTでは上位のタイムを計測。シーズン開幕を期待させる結果を残した。

ついに始まったmoto2クラス元年

2010年を迎え、ついに始まった「世界最高峰2輪レースMotoGP moto2クラス」。MD600は開幕戦より歴史に名を刻んだ。
4月10日から12日に行われた第1戦カタールGP。予選TOPを飾ったのは、Gresini Racing Moto2のToni ELIAS選手。TESTでの転倒が響き、傷ついた体でありながら、唯一2分1秒台を計測し、ポールポジションを獲得。
決勝は序盤より白熱したバトルが展開され、最上位はToni ELIAS選手が4位入賞。そして、Thomas LUTHI選手がコースレコードを樹立。MD600勢の4チーム6ライダーは全員無事完走を果たした。
翌週4月18日には、スペイン選手権に参戦したTEAM ANDALUCIAがMD600を駆り、3位表彰台を獲得。更には、MotoGP第2戦スペインGPでToni ELIAS選手が優勝し、Thomas LUTHI選手が3位。続くMotoGP第3戦フランスGPではToni ELIAS選手が連続優勝。MotoGP第4戦イタリアGPを終了した時点で、CONSTRUCTOR CHAMPIONSHIP/ RIDER POINT RANKING共にTOPという快挙を成し遂げている。

MORIWAKI DREAM- そしてこれからも

MORIWAKIの夢を乗せ、走り始めた「MD600」。世界二輪ロードレースに新たな歴史を刻み始めています。
過去には、2001年4月にWGPが4サイクル990ccのマシンに切り替わる事をきっかけに、「RC211V用HRC製V型5気筒MotoGPエンジン」をHONDAより借り入れ、「MD211VF」というオリジナルマシンを製作。そして世界最高峰2輪レースMotoGPにチャレンジ。2003年の開幕戦、鈴鹿GPに「MD211VFプロト」にてワイルドカード参戦を果たし、2004年MotoGP第5戦カタルニアGPにて14位フィニッシュ。参戦表明から1年8ヶ月、プライベーターとして参戦し、4レース目で悲願のポイントを獲得。世界の賞賛を浴びました。
MotoGP参戦を表明した時は、無謀だと言われた挑戦でした。しかし我々はGP史上最高の馬力を出すエンジンを走らせる事で、自分たちの力を確認したかったのです。初年度でポイントを挙げる事が出来、一つの目標は達成できました。

次の目標は、自分たちの力でエンジン以外ゼロから設計し、MORIWAKIが35年以上培ったロードレーシングの技術を結集し、創り上げた「MORIWAKI MD600」でMotoGP moto2 クラスのコンストラクターチャンピオンという「勝利」を目指します。

そして「MORIWAKI DREAM」はこれからも続きます。世界の頂点を掴むまで。